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沸騰都市シンガポール NHKスペシャル を見て [香港]

NHKで1年くらい前から放送されている「沸騰都市シリーズ」のシンガポール編を見ました。バブル期のピークに始まったシリーズなので、今の時期だと違和感を感じる「沸騰」という言葉が世界情勢の変化を感じさせます。

http://www.nhk.or.jp/special/onair/090215.html

番組で印象に残ったのは、外国人記者と首相のやり取り。
金融危機の影響で外国人労働者の解雇が相次いでいるのは問題ではないか?との記者の質問に対して、
「単純労働に従事する外国人労働者は、バッファー、調整弁に過ぎない。それを踏まえて、外国人労働者に権利を与え、受け入れてきた。国民に選ばれた私の使命は、外国人労働者を守ることではない、シンガポール国民を守ることだ。」

おそらく日本の首相がこの発言をしたら、マスコミからバッシングの嵐でしょう。ちょっと極端な発言ではありますが、国民を守る、シンガポールの国益を守るという明確な意志のもとのこの首相の発言は、理解できる点もあります。また、コロコロ発言が変わる首相とは違って、はっきりと意見を言うリーダーとしてのあるべき姿を感じました。

このようなリーダーの強い意志は、部下にも大きな影響を与えるように感じます。あまり日本では知られていないかもしれませんが、シンガポール政府の公務員の給与は、国の経済成長率に連動しています。実際、今年の公務員給与は削減される予定とのニュースがありました。完全な企業体です。その分かなり高給ですが、それに対する国民の批判は少なく、むしろ「国民の生活を守っている公務員」という尊敬の念を抱いているという話を聞いたことがあります。国民から信頼されることで、また士気が高まるという良い循環を生んでいるのでしょう。

日本もこの給与経済成長率に連動システムを少しでも導入しては?と感じてしまいますが、現状見る限り難しいのでしょうか。

もうひとつ、今回の番組を見ながら、浮かんできたのはやはり香港です。

香港コンベンションセンターにて
DSC_0722.jpg

お互い東京都よりも小さい国土、金融産業への注力、税制優遇などの共通点があり、また、番組で紹介された「バイオポリス」のような施設と似たような取り組みの「香港サイエンスパーク」があるからです。最近は、金融危機の影響を受けているのは否めませんが、日本企業も進出していて縁もあり、日本での誘致活動にも再び力を入れています。

番組を見ると、香港が「企業の研究所・開発拠点」の招致を目的にしているのに対し、シンガポールは「トップレベルの研究者」をターゲットにし、その人脈を活かしてさらに企業誘致というより踏み込んだ戦略を目指しているように感じました。中国という大国がバックにいる香港と違って、小国のシンガポールの危機感の表れかなとも思ってしまいます。実際、金融や海外からの投資に依存してきたシンガポールの経済状況は、深刻な事態であるのは確かですし。

ただ、新しい研究・基礎研究への長期投資という視点で考えると、高額な報酬、豊富な資金と施設はあるものの、2,3年で結果が出なければ解雇、短期間に著名な雑誌への論文掲載を重点的に評価するような目先の利益追求型の環境は、極端すぎる感もあります。番組からは、「自国の研究員を育てる」という意識もあまり感じられませんでした。果たして全ての研究者にとって、シンガポールのやり方が魅力的かというと意見が分かれるところですね。それぐらい真剣に取り組んでいるという政府の意志とともに焦りが伝わってきます。

番組の最後のシーン、シンガポール政府の次の狙いは「安くなった東京の土地」。したたかかつ貪欲に利益を追求する巨大企業という姿を改めて感じました。

明日は沸騰都市シリーズとして東京編が放送される予定です。今度は日本の底力の一端を見せつけて欲しいと思います。

http://www.nhk.or.jp/special/onair/090216.html

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通りすがり

番組内では取り上げられていませんでしたが、シンガポールの自国の学生に対する教育はきわめてシビアだと思います。
各国のトップ大学の学生と比べてみてもシンガポール国立大学の教育は最高レベルに詰め込みだと聞いております。(アメリカの大学レベルの詰め込みは有名ですが、その日ではないと学生が申しておりました)

また、学部レベルで将来性のないセクションを潰して金になりそうな再生医療などの研究に資金を回すなど、他国では考えられないほどシビアな大学経営を行っていると思います。
一方で、そのストレスからアメリカなどに移住志望するものも多いので、囲い込みを図るためシンガポールでの就労を義務付ける法律もあるようです。(短期間ですが)
良かれ悪かれ、冷徹に今日の競争を見つめているので、日本は見習うべき点も多いでしょうね。
by 通りすがり (2009-02-19 11:33) 

yuichiroyu

>通りすがり様
そこまで徹底しているんですね。勉強になりました。学生が息苦しく感じるのも分かる気がしますが、社会は厳しい競争社会である以上、日本の「ゆとり教育」という政策のほうが違和感を感じます。学生にも社会人にとっても、厳しい環境が続きそうですが、なんとか打破できるよう粛々と夜明けを目指して努力していきたいですね。
by yuichiroyu (2009-02-21 00:35) 

出張者

いまNHKでうつ病の治療についての番組をやってます。
ストレスによってうつ病になったりしますが弱者の立場から考えると
シビアな生活であればあるほどうつ病になりやすいかと。
勝ち抜いていくためには激しい競争も必要ですが相当な
プレッシャーにも耐えていかないといけません。
 未だうつ病にはなったことありませんが健康第一で頑張っていきたいですね。
by 出張者 (2009-02-22 21:49) 

yuichiroyu

>出張者さま
経済状況が益々悪化する中で、対前年度比アップを求められる、目標必達を掲げられる環境は社会人にとってかなり厳しいのは確かですね。2008年前半までは、海外出張や忙しいスケジュールで体調を崩す人も多かったですが、現在は世界との競争とともに雇用不安という新たな精神的な悩みが増えていく世の中になっているのが心配です。
雇用不安、消費者の消費抑制、企業業績悪化、さらなる雇用不安というスパイラル。解決法浮かべばいいのですが。。。

by yuichiroyu (2009-02-23 00:16) 

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